読みもの

【tanuki journal】No.28 時を重ねた家具と自分の“好き”を信じてつくる、心地よい暮らし方。

2026.07.30

北欧家具tanukiにて取り扱う北欧ヴィンテージ家具・雑貨達。今から50~70年前に作られた作品達は今もなお現代の生活を彩り豊かさや温かみを与えてくれます。当店で出会いを果たした家具・雑貨達が暮らしの中でどのように取り入れられているか、お客様宅を訪問・取材し心地よい暮らしのヒントを探る【tanuki journal】。

第二十八弾はインテリアスタイリストの岩佐さん宅を訪ねました。北欧ヴィンテージや日本の家具、作家ものやさまざまな雑貨たち。異なる国や時代のものが並びながらも、不思議と心地よい統一感に包まれた岩佐さんのお住まい。そこには、流行やジャンルに縛られず、自分自身の「好き」を信じながら丁寧に選び重ねてきた暮らしがありました。


-北欧ヴィンテージはどのように知りましたか?

岩佐さん:10年以上前にインテリアスタイリストの師匠のアシスタントをしていた際に、いろいろなものをリサーチしたり当時目黒通りの家具屋さんで教わったり、撮影用の家具として触れ合う中で少しずつ北欧ヴィンテージ家具を知るようになりました。師匠自身も当時クッカプーロのラウンジチェアやアノニマスのデンマークのダイニングチェアを使っていたりして、素敵だなと思っていました。ヴィンテージとして自分の家で初めて使うことになったのはこのアルヴァ・アアルトのNo.69チェアでした。

アルヴァ・アアルトNo.69チェア。背もたれを貫通しているビスを武骨にカットした雰囲気がよい。

-惹かれたポイントはありますか?

岩佐さん:素材も魅力ですが、シンプルで奇をてらわないデザイン、ある意味いい意味で普通。それが惹かれるポイントで長く愛せることに繋がっていると思います。サイズも小振りで日本の住宅にも合わせやすいですし、今より狭かった以前の住居でも置きやすいサイズ感ですごく好きです。最初にNo.69を購入してから現在の住居が3件目なのですが、それぞれ物件が全然雰囲気が異なるにも関わらず、どの空間に馴染んでくれるというか、包容力があることを感じますね。何をしても合わせやすい、どんなところでもあってくれるみたいな。あとは、たぶん安かったんですよ笑。まだ当時はそんなにお金もないなかでお手頃な価格で販売されていて。一般庶民なので、手に届かないようなものよりは、一般の人にも広く使ってもらいたいみたいな思想があるデザイナーさんの方が親近感を覚えるというか、自分の生活に取り入れるならそっちのほうがあっているなと思います。インテリアの勉強をしていくとやっぱりアアルトはすごいなって思っていて、初めてアアルトの家具に触れて生活に実際に取り入れられたことはすごくうれしかったです。あとは、よく見ると荒いというか、これまで使ってきた人の歴史を感じるところもポイントです。

メキシコ製のエキパルスツール。
 Gae Aulenti(ガエ・アウレンティ)と Piero Castiglioni(ピエロ・カスティリオーニ)デザインの PAROLA ペンダントランプ。

-ヴィンテージをあえて選ぶ理由はありますか?

岩佐さん:もちろん新品もキレイで素敵なのですが、そういうことよりも時間の積み重ねを感じたり、その家具にしか持っていない背景、傷とかから歴史を見て取れるというか、そういう味がある方が好みで、そういったものが近くにあったほうが安心するし楽です笑。緊張しないというのもあるかもしれないですね。唯一無二というか、絶対に同じものがない。ひとつひとつ異なるものとの出会いみたいなところも魅力だと思います。

岩佐さん:ハンス・J・ウェグナーのRY100は、当時ヴィンテージで大きい本棚をずっと探していて、いろいろ探す中で北欧家具tanukiさんで見つけて購入しました。サイズとインパクトに惹かれましたし、画像で見ても超かっこいいなと。これだったら一生使えるから!と夫を説得できると思って、プレゼンしました笑

当店でご購入いただいたハンス・J・ウェグナーのRY100。

岩佐さん:とてもきれいですよね。作られてから半世紀以上経っているのにどうしてこんなにきれいなんだろうって思います。たぶんきれいな状態で大切に受け継がれてきたというのもあると思いますが、リペアする方もすごく丁寧に作業してくださったのだと思って。tanukiさんありがとう!って思いました笑

岩佐さん:実物を見ない状態で購入しましたが、実物を近くで見ると金具を見るだけでもかっこいい。私はモノづくりしている人が大好きで、どういう風に作っているのだろうとか、継ぎ目とか脚のデザインとか小口の雰囲気とかつい見てしまいます。そういうところを見るたびに、そこにリスペクトを感じますし、すごく感動しています。私たちは二人とも本をたくさん買ってしまうのですが、本だけでなく、食器を入れてもいいですし、ディスプレイとしても活躍してくれて、いろいろな使い方を考えるのも楽しいです。実際にものを入れてみると自分たちらしい本棚になってくれて、なんというか主張しすぎない感じがすごくいいなって思っています。俺が俺が!という押しつけ感はないのに、ウェグナーのオーラが溢れ出ている感じ。それがとてもかっこいいなと思いますし、これ一つが空間にあるだけで部屋の格が爆上がりします。

岩佐さん:椅子研究家の織田憲嗣さんも、”いい家具は使う人の所作を要求する”みたいなことをおっしゃっていましたが、正にそうだと思います。やっぱりちゃんと作られたものとかに座ると、姿勢がピッとなりますよね。今までここのこの時代に来るまでにきれいに保たれてきたヴィンテージ家具だから、もし次に誰か使うことがあるとしたら、大事に使わなきゃという気持ちになります。

-お気に入りの家具はありますか?

岩佐さん:全部気に入っていますが、レコードプレーヤーを置いてあるコンソールラックはサイズ感も珍しく気に入っています。最近のお気に入りは友人の家具職人のYU MIMURAさんに作ってもらったコーナーキャビネットです。コーナーにしかテレビを置けなくて、以前はドイツのヴィンテージのキャビネットを使っていたのですが、角が出てしまうし存在感が大きすぎてあまり気に入っていなかったのですが、RY100と同じチーク材を使用して、板厚も合わせて作っていただきました。それが愛を感じるというか、ありがたいなと思いました。

RY100との相性がとてもよいコーナーキャビネット。
奥行きが浅めの珍しいサイズ感のコンソールラック。
Stoopさんで購入したレンガは配線隠しで使用。

-国やジャンルの異なるアイテムを取り入れる際に気を付けていることはありますか?

岩佐さん:自分の好きとか、自分がいいなと思ったことを大事にして自分の家に迎い入れていくと、そこの根底がぶれていなければ自分らしいひとつの筋が通る気がするんですよね。人がいいと言っているからやってみる、だと多分ブレてくるのでまずは自分を信じてみる。いろんな異なるものを組み合わせることでコントラストが生まれるじゃないですか。そこにその人の個性も生まれてくるのかなと思うので、ジャンルを統一しなきゃいけないみたいなことは思わなくて全然いいんじゃないかな。

岩佐さん:ジャンルや樹種が全部そろっていなくても、部屋のなかでいくつかある要素の中の2つ3つが繋がっていれば、全体を見た時に繋がりを感じられると思います。全部バラバラだとチグハグに見えてしまいますが、例えばヤコブセンのアントチェアと天童木工のテーブル、ギスペンのチェアのようにスチール脚で揃えてみるとか、何か自分が見える視界の中で繋がりを感じられる要素をつないでいくとよいと思います。

柳宗理デザインの天童木工のテーブル。
アルネ・ヤコブセンのアントチェア。スチール脚のテーブルと椅子の組み合わせで要素を繋げている。
WH Gispen(ヴィヘルム・ヘンドリック・ギスペン)のラウンジチェア。

岩佐さん:日本の狭いアパートのごちゃごちゃした部屋を紹介している都築響一の『TOKYO STYLE』で紹介されているようなスタイルも、それはそれでかっこいいと思うタイプなんですよね。その人らしさが出ているのが一番かっこいいと思いますし、その人自身が快適でリラックスしていられるということがまず大事で、そうすることが心地のよい暮らしに繋がってくるのかなと思います。でもやっぱりそうはいいながらも、お客さんが来るときはすごく掃除するじゃないですか笑。部屋がピカーときれいになるのもすごく気持ちがすがすがしくなると思っていて、家具を拭いてみたり、丁寧に掃除したり、そういうことも心地のよい暮らしにつながるひとつの要素になるんじゃないかと思います。


北欧ヴィンテージや日本の家具、作家もの、異国の雑貨。それぞれ異なる背景を持つものたちも、自分自身の軸を持って選び続けることで、その人らしい心地よい空間へと繋がっていく。また、好きなものを自由に取り入れながらも、スチール脚や素材など共通する要素を意識的に繋げていくことで、空間全体にまとまりを生み出していく。岩佐さんのお住まいには、心地よい暮らしをつくるためのヒントが随所に散りばめられていました。岩佐さん、この度は素敵なお話と心地よい住まいを取材させていただき、誠にありがとうございました。

Instagram chifuyuiwasa

 

北欧家具tanuki 北島