当店のメンテナンスについて

時間を経たものだけにしかない物語、当時造られたものにしか宿らない唯一無二の存在感を持つビンテージ家具や小物達はさりげなく生活に彩りを与えてくれます。そんな商品達を蘇らせ次の方へ引き継いでいく、それぞれのストーリーがこれからも続くように、これからのアンティークになっていくように一点一点心を込めて丁寧にメンテナンスし皆様にお届けしています。

0.買付

よい商品をお届けするには良いメンテナンスが必要です。ただ、買い付ける商品の元々の状態が良くなければ元も子もありません。状態の悪いものでも時間を掛けてリペアすれば蘇りますが、価格が合わなくなってしまいます。リペアを熟知した店長自らが買付を行うため、商品の状態はもちろん、どれほどのメンテナンスが必要か、メンテナンスに欠けられるコストはどのくらいか、最終的に適正な価格になるかを判断、買付中はメインのデンマークでは隣国も含め20ヶ所以上を回り厳選して買付をしております。

買付

1.状態のチェック

現地で買付され運ばれた商品はそれぞれ状態が異なります。それぞれ最良最適なメンテナンスを行うためにしっかり状態を見極めメンテナンスの方針を決めます。メンテナンス前の状態であればお客様とメンテナンス方法をご相談させていただき、お客様のご希望の仕上がりにすることも可能です。

状態チェック

2.解体

接合部の緩みやぐらつきを取るために分解できる箇所は分解します。分解しなければわからない不良個所もあり、特に椅子やソファなど体重が掛かるものは重要な作業です。古い接着剤を丁寧に取り除いた上で再接着することで構造的な強度を復活させます。ビスや金属パーツなども一つ一つサビを落とし、必要に応じて交換しています。

解体

3.研磨

メンテナンスを行う中で時間をもっとも割くのがこの作業。それぞれのパーツの表面を紙やすりなどで磨いて古い塗装をはがしていきます。必要に応じて剥離剤などを使用し、導管の汚れも取り除ききれいな仕上がりになるように手を掛けていきます。最初は荒目の番手から始め、少しずつ何段階も紙やすりで表面を磨いていきます。オイルを塗布した時の仕上がりに直結する作業ですので、丁寧な作業を心掛けます。丁寧に研磨を行うことで、肌触りの良い仕上がりとなりますので、ぜひその質感を実際に味わっていただきたいです。

研磨

4.再接着

クランプ等を使用してもう一度組み上げ接着します。ゆがみが出ないようガラスの天板などを使い細心の注意を払いながら行います。

再接続

5.塗装

必要に応じて数種類の方法を使い分けます。当店では特別なご要望がない限りはオイル仕上げをしております。古い塗装がはがれ素地が出た木部表面にオイルを塗る瞬間は、一気にその木部が持つ美しさが復活し、これまでの苦労が報われるひと時です。

塗装

6.組み上げ・最終調整・その他

引き出しや扉のすべり、脚にがたつきがないかをチェックします。欠けが目立つ箇所にはパテで補修したり目立たないようにタッチアップを施します。必要に応じてパーツを作成することもあります。

組み上げ・最終調整・その他

7.張替

チェアやソファなどは、状態のよい物を除き基本的に張替を行っております。古いウレタンなどはぼろぼろになっているものも多く、普段は見えない中身も新しく交換しています。メンテナンス前の商品であればお好きな椅子生地に張替が可能ですので楽しみも広がりますね。

張替

フルメンテナンスと簡易メンテナンスの違い

当店で行うメンテナンスは木部を剥離・研磨して仕上げるフルメンテナンス、木部を簡易的に調整して仕上げる簡易メンテナンスの2種類があります。それぞれの方法の仕上がり具合を見て行きましょう。

こちらの棚板の左右それぞれに①水分を長時間含んだことによるシミ②薬品による塗装の劣化③ 塗装の剥がれ④傷⑤輪染みを再現しました。左半分は研磨なしメンテナンス、右半分はフルメンテナンスで仕上げています。
※ぐらつきやがたつき、引き出しの滑りの調整、その他使用上差し支えのある部分のメンテナンスはフルメンテナンス・簡易メンテナンスどちらの場合でも行います。見た目に差はございますが実用上の差はございません。

それではまずは簡易メンテナンスです。
簡易メンテナンスの場合は木部をクリーニング後、スチールウール等を用いて表面の汚れや微細な小傷を取り除きます。表面調整後、オイルにて仕上げます。本格的な研磨ではないため、硬い塗膜や深い傷、シミはそのままとなりヴィンテージ感のある仕上がりになります。

スチールウール等を使用して表面を調整します。微細な傷や汚れを除去し表面を均一に仕上げます。

全体を調整後、ダストを除いた状態です。水漏れによる塗装ムラは落ちたようですが、シミや小傷の跡が残っています。こちらの状態からオイルを塗布します。

次にフルメンテナンスの場合の工程を見て行きましょう。
古い塗装を剥がすために一度剥離します。コンディションによっては研磨から入りますがこちらの棚板は塗膜が厚めの為、剥離からとなります。

剥離剤を塗っていきます。

剥離剤を均一に塗った後、少し時間を置いて剥離剤を取り除きます。

古い塗装や汚れが取れ、透明だった剥離剤が茶色になっています。塗装自体に色が入っている場合もあり、全般的に剥離すると元々よりも明るめの仕上がりになることが多いです。

ヘラやブラシなどで剥離剤を可能な限り取り除きました。この時点でシミや色むらなど除去できましたが、表面の小傷はまだ残っています。次は研磨工程です。

複数の番手を使用して表面を調整します。美しい仕上がりを目指しそのコンディションによっては導管の汚れを針を使ってひとつひとつ取り除くなど、簡易メンテナンスでは行わない細かな作業を行います。その後オイル塗布して仕上げです。

フルメンテナンス側と簡易メンテナンス側のそれぞれ下地処理を行った後にオイル塗装をした状態がこちらとなります。双方とも元々の状態よりもきれいに仕上がりましたがそれぞれの個所を拡大して様子を見てみましょう。

①水分を長時間含んだことによるシミ

  • 簡易メンテナンス
  • フルメンテナンス

フルメンテナンス側は特に色むらなどもなく綺麗に仕上がりました。簡易メンテナンス側は元々の状態よりも綺麗になりましたが、わずかに色むらが確認できます。

②薬品による塗装の劣化

  • 簡易メンテナンス
  • フルメンテナンス

フルメンテナンス側は特に色むらなどもなく綺麗に仕上がりました。簡易メンテナンス側は劣化した塗膜がそのまま残りました。

③ 塗装の剥がれ

  • 簡易メンテナンス
  • フルメンテナンス

フルメンテナンス側は特に色むらなどもなく綺麗に仕上がりました。簡易メンテナンス側は元々の状態より目立たなくなりましたが、シミは残りました。

④傷

  • 簡易メンテナンス
  • フルメンテナンス

フルメンテナンス側の傷は取れ綺麗に仕上がりました。簡易メンテナンス側は元々の状態より目立たなくなりましたが、浅い角度から見てみるとまだ傷は残っています。

⑤輪染み

  • 簡易メンテナンス
  • フルメンテナンス

フルメンテナンス側のシミは取れ綺麗に仕上がりました。簡易メンテナンス側は元々の状態より目立たなくなりましたが、輪染みが残りました。

その他の仕上がりの違いとしては、フルメンテナンス側は剥離をしたことにより古い塗膜を除去しましたので、木の質感が楽しめる仕上がりとなりました。簡易メンテナンス側は古い塗装が残り、塗膜感のある仕上がりとなりました。

まとめ

ここまでフルメンテナンスと簡易メンテナンスの違いをご説明いたしました。フルメンテナンスを行えばシミや小傷は可能な限り除去可能で木の質感も楽しめるきれい目な仕上がりとなります。簡易メンテナンスの場合は元々の塗装やシミ、小傷は残ることが多いですがヴィンテージ感のある仕上がりが魅力です。
またコンディションが元々よい商品においてはフルメンテナンスをしなくてもきれいに仕上がるものもございますので、気になる商品がございましたらご希望に応じて最良のメンテナンスのご提案をさせていただきます。
双方どちらともがたつきやぐらつき等の使用上問題のあるような部分についてのメンテナンスは含まれておりますので実用上は差はなく、見た目の差がフルメンテナンスと簡易メンテナンスの差となります。
またご希望に応じて例えば天板のみ剥離研磨ありのフルメンテナンス、他の部分は簡易メンテナンスなど組み合わせてのメンテナンスも可能です。その他ご希望に応じてメンテナンスの仕様にご対応させていただきますので、ご希望ございましたらご遠慮なくお申し付けくださいませ。